東京五輪へ新星

東京マラソン東京五輪へ新星 井上、冷静な判断光る 



 
東京マラソン 男子8位

 2020年東京五輪へ新星が現れた。山梨学院大を卒業して2年目の井上は胸を右手で2回たたき、両手を広げてフィニッシュ。日本選手トップの2時間8分台に「びっくりと同時に、うれしい。混乱しています」と初々しい。

 2度目のマラソンとは思えない冷静な判断が光った。序盤、世界記録を狙う先頭集団が見える位置で積極的に走ったが、5キロ14分31秒と日本記録より20秒以上速い。「自分のペースで」とギアを落とした。これが奏功し、38キロ付近でスタミナ切れの設楽に追いつき勝負どころと見極めて「全力を出し切る」とスパートし振り切った。

 同学年に村山兄弟、1学年上には設楽、大迫ら若くから世界選手権やリオデジャネイロ五輪に出た精鋭がそろう。井上も大学の時に世界ハーフに出たが、気後れしていた。

 だが「マラソンならば負けない」と心に秘めていた。マラソンに力を入れる地元・長崎のMHPSに15年春入社。先輩を見て日常の積み重ねの大切さを学んだ。今大会へ向けて40キロ走を8本重ね、地力をつけた。

 同年代で最初にマラソンで結果を残したが、トップのキプサングとは4分半近い大差。「世界との差を詰めないと」と満足しない。高校で陸上部顧問に夢を問われ「マラソンで世界レベルで戦う」と定めた24歳が、夢の東京五輪のメダルへ一歩を踏み出した。