寝ているときに、突然ふくらはぎがつったような感覚になることはありませんか? 思わず飛び起きるほどの痛みに、眠るのが怖くなってしまうことも…一般的に「こむら返り」といわれるこの症状ですが、実はこむら返りではない場合が! ?症状の違いや対処法を、東京睡眠医学センター長の遠藤拓郎先生に伺いました。

心当たりのない痛みは要注意! 足がつる原因と症状

 
「足がつる原因にも実は2種類あるんですよ」と遠藤先生。運動が原因で筋肉など運動系の器官に異常をきたしている場合と、ホルモンの問題が原因で感覚系の器官に異常をきたしている場合があるのだそうです。
 
長時間運動を続けて疲労がたまり、体力が落ちているときや、運動不足のときに起こるのがいわゆる「こむら返り」。ふくらはぎの筋肉が異常に収縮してしまう現象です。一方、同じ症状がドーパミン不足によって起こるのが「むずむず脚症候群。こちらの場合は、つったように感じるだけで、実際には筋肉は収縮していません。ふくらはぎの痛みを感じる人の中で「こむら返り」の場合と「むずむず脚症候群」の場合との割合は、「こむら返り」のほうが多いそう。症状はほぼ同じのようですが、見分け方はあるのでしょうか?
 
「たくさん運動した日などに起こったら『こむら返り』、何もしていないのに痛くなれば、『むずむず脚症候群』の疑いがあります」(遠藤先生)
ふくらはぎを触ってみて、固くなっていれば「こむら返り」、固くなっていなければ「むずむず脚症候群」とするのもひとつの判断基準なのだそうです。

ところで「むずむず脚症候群」って何?

 
横になっているときに、脚に違和感があり、脚を動かしたくなることはないでしょうか? 「脚がむずむずする」「虫が這っているような感覚がある」という場合や、「脚がほてる」「痛みを感じる」など、その違和感は人によりさまざま。これらは、「むずむず脚症候群」の症状である可能性があります。ひどい場合は「貧乏ゆすり」が症状として表れるのだそう。
 
「『むずむず脚症候群』の原因のひとつは、ドーパミンの減少と考えられています。脳からの司令を伝えるドーパミンが減少することで、感覚器官が正しく機能しなくなるのです」(遠藤先生)
 
ドーパミンは加齢によって減少します。さらに貧血の人や、腎臓が悪く人工透析を行っている人はドーパミン不足になりやすいそうで、暑い時期のほうが症状が出やすいという特徴があります。
 
「『むずむず脚症候群』の症状が起こると、眠る前に脚に違和感があって寝つけなかったり、寝ている途中で目が覚めたり、眠りが浅くなったりと、質のよい睡眠がとれなくなることが多いんです。そのため、睡眠外来でドーパミン分泌を促す薬を処方するなどの対処が必要になります」(遠藤先生)
 
「こむら返り」は整形外科、「むずむず脚症候群」は睡眠外来と、かかるべきお医者さんも異なります。ふくらはぎの痛みに悩んでいる人は、まず自分でどちらの痛みなのか、確かめてみることが必要ですね。

安心して眠るために…知っておきたい痛みの対処法

 
「こむら返り」にしろ、「むずむず脚症候群」にしろ、とにかく痛いこの症状。事前に予防することができたらうれしいですよね。でも、「残念ながら、事前に防ぐ方法はありません」と遠藤先生。
 
「『こむら返り』であれば、運動不足の解消やミネラルの補給である程度防ぐことができますが、『むずむず脚症候群』の場合は薬でドーパミンの分泌量を増やすしかないので、根本的な改善は難しいですね」(遠藤先生)
 
むずむず脚症候群」の予防ができないなら、対処法を覚えておきましょう。
「ふくらはぎに痛みを感じたら、痛い部分をゆっくり動かしたり叩いたりするか、冷やすことでふくらはぎに刺激を与えてみてください。また、温・冷湿布どちらでもいいので、半分くらいのサイズに切り、足の甲と足裏に貼ることでも改善が期待できますよ
痛みが頻発する人は、ベッドサイドに湿布を用意しておきたいですね。
 
今まで原因がわからなかったふくらはぎのつり、実は「むずむず脚症候群」だったのかも…? 頻発するようなら、「こむら返り」か「むずむず脚症候群」かをまずはセルフチェックし、お医者さんに相談してみましょう。