【箱根駅伝】来年から「山登り」5区を短縮、

23・2キロ→20・8キロへ…4区は2・4キロ延長



箱根駅伝を主催する関東学生陸上競技連盟関東学連)は25日、来年の第93回大会から4区を18・5キロから20・9キロに、5区を23・2キロから20・8キロに、それぞれ2・4キロ延長、短縮することを決定した。往路の小田原中継所は2006年大会から鈴廣前の施設拡張工事に伴い、東京寄りのメガネスーパー前に移されたが、11年ぶりに以前の中継所に戻る。従来の4、5区の区間記録と往路、総合記録は参考記録扱いとなる。

 06年の82回大会から今年の92回大会まで11回の箱根駅伝は5区で多くのドラマが生まれた。「天下の険」の上り区間が距離延長されたことで、難度が大幅にアップ。今井正人(順大、現トヨタ自動車九州)、柏原竜二東洋大、現富士通)、そして、神野大地(青学大4年)が「山の神」と呼ばれるほど活躍し、大会を盛り上げた。

 ただ、同時にチーム成績に対する5区の比重が大きすぎるという問題が生じた。10区間中、5区が最長区間となった11大会で区間賞を獲得した選手を擁するチームが10回も往路優勝、7校が総合優勝を果たした。また、低体温症や低血糖症に陥り、大ブレーキとなる選手も続出した。
 関東学連はこの日、都内で最高議決機関の代表委員総会を行い、4、5区の距離変更を決定。結果的に往路の小田原中継所はメガネスーパー前から2・4キロ箱根寄りにある05年大会までの鈴廣前に戻ることになった。関東学連は「5区選手の生理学的負担が大きく、総合成績に対する貢献度も大きすぎる。また、4区の距離を短くしたことでマラソンの順応できる選手の芽をつみ取っている懸念の検討結果」と説明した。

 5区が23・2キロから20・8キロに短縮されることで最長区間は2、9区(23・1キロ)となる。早大時代に4年連続で2区を駆けた瀬古利彦DeNA総監督(59)は「5区の短縮は良いことだ。各校のエースは2区を走ることになる。世界につながる区間はやはり花の2区なんです」と歓迎した。

 最短の18・5キロだった4区は新人が起用されることが多く“つなぎ区間”とされていたが、20・8キロに延長されると05年大会以前と同様に“準エース区間”の位置づけとなる。終盤に緩やか上るため、地力が求められる。96年アトランタ、00年シドニーの両五輪に出場した花田勝彦(早大)、マラソン日本記録保持者の藤田敦史(駒大)ら好選手が生まれた。
 「3代目・山の神」神野大地が持つ5区の区間記録をはじめ、15年大会で青学大勢がつくった総合、往路、4区の最高記録は「参考扱い」となる。05年大会まで、ほぼ同じコースで行われていた4区は99年に藤田がマークした1時間0分56秒、5区は05年に今井がたたき出した1時間9分12秒は正式な区間記録ではなく「目標記録」となる。
 4区の延長と5区の短縮について、箱根駅伝を連覇した原晋監督(48)は「戦略が変わる。距離が長くなる4区はエース級の選手が起用される。青学大には田村和希、あるいは下田裕太(いずれも2年)という20・8キロの4区の適性にぴったりの選手がいます。結果的に選手層の厚いチームが有利になり、上位と下位の差が広がるでしょう」と話す。来年大会以降、箱根駅伝は新たな時代を迎える。

 5区記録保持者・神野大地(青学大4年)「だれかに記録を破ってもらいたかったという残念な気持ちもありますが、距離変更によって箱根駅伝の競技レベルが上がり、さらに盛り上がってくれることが一番です」
 4区記録保持者・田村和希(青学大2年)「記録が参考になることに特に感想はありません。新しいコースでも区間新記録を狙えるような力をつけたい」